意地悪な君に
部屋は2つあった。
廊下へ出るドアとは別に、お互いを行き来できるように中でもドアで繋がっている。
メインの部屋と、奥の部屋が準備室ってかんじかな。
私はメインの部屋しかまだ入った事がないから初めて奥の部屋を見たけど、こっちはメインの部屋の半分くらいの狭さ。
メインの部屋には一応事務机があって、仕事をする部屋。
ソファがあるのは、人が来た時に簡単な打ち合わせスペースになるようにらしい。
奥の部屋は…
小さな冷蔵庫や電気ケトルがあって、生活感もある。
でも、それよりも。
すごい量の本と資料。
メインの部屋にも大概な量の資料があったけど、一目見ればわかる。
あっちの部屋にある資料とでは、その量も重要度も違う。
明らかな秘匿情報の山。
やっぱり、こんな先輩でも、大変な役割を担ってるんだな…
「冷蔵庫とかは自由に使っていいから。コーヒーとかも先輩からの差し入れが棚に入ってるから飲んでね」
木下先輩は、優しく場所と使い方を教えてくれた。
具体的な仕事や資料の内容に触れないのは、やっぱり私達が生徒会メンバーじゃないからだろう。
私はあくまでもサブ。
雑務を手伝うだけだから、詳しい内容は明かす必要がない。
それは当然の事だからいいんだけど…
逆に心配になる。
「あの、先輩…」
恐る恐る尋ねる。
「すごく大切な資料とかいっぱいあると思うんですけど、いいんですか?部外者が出入りしちゃって…」
木下先輩は相変わらず優しく答えてくれる。
「書棚は鍵がかかってるから大丈夫。佐伯さん達にお願いしたいのも、過去の資料整理とかだから既にオープンな情報だし」
そこに悠先輩が補足する。
「俺達が鍵管理さえちゃんとやりゃ問題ない。それに進行中の物はパソコンに入ってて、パスワード管理してるから、俺達だって滅多にあそこは開けない。
なにかトラブルがあったとしても、おまえが疑われるような状況にはしない。」