意地悪な君に
不貞腐れた先輩はそれから言葉を発さず。
千紗はそんな悠先輩に更に苛立ち。
木下先輩はそんな空気を気にせずマイペース。
「さ、仕事~♪」
鼻歌なんて歌っちゃって。
私は…
3人を見比べて、一番平和そうな木下先輩に避難する事にした。
今は正直、あの2人どっちも刺激したくないもん。
2人の間にはバチバチと火花が見える…
私のために怒ってくれたとは言え、滅多に怒らない千紗は、一旦怒ると手が付けられない。
下手に近づくと、私も危ない。
「わ、私は今朝の続きやろうかなー。木下先輩、ソファの向かい側借りますね」
書類の束を事務机からソファに移動する。
だって、机だと悠先輩の隣に座る事になっちゃうんだもん…
背中を丸めてローテーブルの資料に取りかかると、木下先輩も同じ様に向かい合わせに頭を下げたから、思いがけず顔が近くなった。
一瞬ドキッとしてしまったけど、すぐに気付く。
内緒話?
「どーすんの、悠、機嫌損ねちゃったじゃん」
顔を近付けて、私にしか聞こえないように言った木下先輩の囁き声に耳を疑う。
は!?
私が悪いの???
どー考えても、悠先輩が悪いでしょ!!!
いくら友達でも、ありえなくない?
そう思った私の気持ちは顔にそのまま出ていたらしく、木下先輩は慌てて否定する。
「そこじゃなくて!それは悠が悪い。」
思わずボリュームの大きくなった木下先輩の声は、悠先輩の耳にも届いたみたいでギロリとこっちを睨まれた。
睨まれた先輩は慌ててまた小声になる。
今度は手でご丁寧に内緒話のポーズまでして。
「ホラ、佐伯さんがこっち来ちゃったから、拗ねちゃったんだよ」