意地悪な君に
俺が奥の部屋に引き篭もってしばらくすると、コンコンとノックの音がした。
木下だったらノックなんてしないから、
もしかして、美晴・・・?
そんあ俺の期待はもちろんハズれ。
入ってきたのは橘さんだった。
「なに?」
正直、この子ちょっと苦手なんだよな。
痛いトコ突いてくるし。
・・・でも、いい子だと思う。
美晴の為に一生懸命になってくれてるし、美晴にこんな友達がいてよかったと嬉しくも思っている。
だから、俺も橘さんに対しては感謝の気持ちもあるわけで。
感情に振り回されないで、冷静に話すあたり頭がいいんだろう。
俺は、美晴には素直に言えなかった気持ちや、守りたいって思っている事を、橘さんには話してみようかと思い始めていた。
「美晴の事、執着するんですね」
「別に・・・」
見方に付けようなんて思っていない。
ただ、俺がそういう気持ちでいるって事を知っていてほしかった。
きっと普段美晴の一番近くにいるのは彼女だから。
何かあった時に、助けを求めていい存在だって、知っていてほしい。
でも、そんな俺の思考は停止した。
彼女の思いがけない一言によって。
「美晴は全然あなたの事覚えていないのに?」