意地悪な君に
ぎゅ……
私を抱く悠先輩の腕に力が入る。
えっ?
えーーー!?
「わ、わゎ、わぁー」
バタバタと暴れて先輩の腕から脱出すると、私の顔を見て悠先輩が吹き出した。
「ぷっ…バカ…」
い、今のは…
助けてくれたんだよね?
おかげで転ばずにすんだけど、それどころじゃないくらい心臓がバクバクしてる。
「な?一人じゃ危なっかしいから、送ってく」
いやいや…
ひとりなら、こんな不整脈おこさないんだけどね……
結局、断る私を無視して、先輩は私と一緒に北町で降りた。
駅から10分歩くと言ったら、危ないからと心配してくれたみたいだけど…
先輩、一体私の事をいくつの子供だと思ってるんだろう。いくらなんでも、過保護だと思う。
公園を過ぎ、暗くなった道をのんびり歩くと、遠くに明かりのついた家がみえてきた。
「お、明かりついてるな。」
「はい、お母さんがいるんで。だからもうここで大丈夫ですよ」
そう言って先輩を見ると「よし、じゃあここで」と言って今来た道を引き返そうとした。
……あれ?
“よし、明かりついてるな”
私の家は、窓の明かりで何とか判別つくくらいで、まだ少し離れている。
(何で先輩、あれが私の家だってわかったんだろう?)
・・・私、言ってない。
「先輩、どうして私のいえ…」
「みはるーーー!!」
しかし、先輩にかけようとした質問は、突然現れた“兄”によって遮られた。