意地悪な君に
暗い道を行く先輩の背中はすぐに見えなくなった。
さっきまでの騒がしさが、一瞬シンとなって、何だか寂しい。
「いやー悠、格好良くなってたねぇ~」
はっ・・・!!
そうだった!!
「ちょっとお兄ちゃん!どういう事!!?何であんなに悠先輩と仲いいのよっ!!」
「えーだって、仲良しだもんー」
答えになってないし。
歩道の白い線の上をはみ出ないようにフラフラ歩きながら、家に向かって歩くお兄ちゃんは、元とはいえとても敏腕生徒会長だったようには見えない。
お兄ちゃんが現役会長だった頃私はまだ小学生で、格好良くて何でも出来るお兄ちゃんは私の憧れだった。
もちろん今も大好きなのに変わりはないけど、私も成長して兄がちょっとホンワカし過ぎな事にも気付いた。
まぁ、そんなギャップがたまらないのか、相変わらずモテるみたいだけど。
そんな事を考えながら、少し距離を空けて後ろをついて歩くと、
突然、お兄ちゃんが立ち止まり、
振り返った。
「美晴は悠の事嫌いなの?」
街灯の下、まるでスポットライトに照らされたようなお兄ちゃんが、私に聞いた。
嫌いなの?
…………。
なんでかな。
ひどい事されたはずなのに。
嫌いじゃないよ……