意地悪な君に


男はため息をひとつ吐くと、噴水の中に立ち上がった。


あ、意外と背が高い。
よく見ると顔も整ってるし、格好イイかも…


なんて。
場違いな事をぼんやりと考えていると男が声を発した。




「来いよ」




…?



「その格好じゃ風邪ひく」




え?
来いよってドコへ?

って言うか、初対面のよくわかんない人についてっていいのかなぁ


制服着てるから生徒だろうけど、なんか雰囲気怖いし。



どうしたらいいかわからずに黙っていると、




「来い、何度も言わせんな」



それだけ言うと私の腕を掴んで噴水から引っ張りだした。



「えっちょっ…あのっ、でも…!」



男は振り返りもせずに私の腕を掴んだまま、ぐんぐん歩く。


なんなの、この強引な人!
初対面なのに、ありえない!!





無言のままぐんぐん歩き、校舎の奥の階段を3階へ上がる。


どこ行くんだろう…
周りは空き教室や資料室みたいで、人の気配がない。




ヤバい人だったらどうしよう。

高校生活初日に襲われるなんてこと…



逃げた方がいいんじゃないの?私。



でも、腕はがっちり捕まれていて、振り切れそうにもない。





逃げる方法を考えてみるけど、何も思い付かない。


しかも、冷えたシャツが肌に張り付き体温を奪い、思考が纏まらない。





男に掴まれた腕の部分だけが熱く感じる。




腕を振り切れたとしても、多分すぐに追い付かれるだろうけど、




ダメもとで…
腕にグッと力を入れた。



-----その時、

男が立ち止まった。



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