意地悪な君に
俊くんの家の前に車が止まると同時に、小さな女の子が玄関から飛び出してきた。
その手にはタオルを持っている。
「としにぃー!」
そう叫ぶと車から降りた俊くんに駆け寄った。
「寒くなかった?大丈夫?」
俊くんに妹がいるのは聞いた事があったので、僕にはこの女の子が俊くんの妹だとすぐにわかった。
「大丈夫だよ、ホラ美晴も濡れるから早く家に入って」
そう言って玄関に全員駆け込むと、そこで始めて女の子は僕に気付いた。
「・・・!!お客様!!」
目を真ん丸にして、僕を見上げている。
「そうだよ。この人は悠お兄ちゃん。家が遠いからうちで休んでもらうからね」
俊くんがそう僕を紹介すると、その小さな女の子は僕に向かってきちんとお辞儀をした。
「はじめまして。美晴です。」
そして、顔を上げたと思ったらそのままの勢いで、僕の顔も見ずに走り去った。
家の奥でバタン!ガシャン!と色んな音がする。
僕は何事かと俊くんを見たけど、俊くんは察しがついているようでクスクスと笑うだけ。