意地悪な君に





靴を脱いできちんと揃える。



「お邪魔します」



俊くんに案内されて、リビングに続く廊下を歩いていると、さっき走り去った美晴ちゃんがバタバタと走り戻ってきた。

手にはタオル。



「はい!」



そして、そのタオルを僕に差し出す。



「……え?」



突然の事に頭が追い付かず、間抜けな返事をしてしまう。



「髪、濡れたままだと風邪ひくよ。」



あぁ、ありがとう、と返事をし、タオルを受け取る。

さっきいきなり走り去ったのは、僕の髪を見てタオルを探しに行ったのか……

あんなバタン、ガシャン大騒ぎで…

僕はさっきの騒ぎを思い出し、思わず笑ってしまいそうになったので、慌ててタオルで顔を隠した。

そのまま髪を拭いて誤魔化す。





タオルはふんわりと、良い匂いがした。




「こっち!お部屋、暖かいよ~」




美晴は俊くんを追い越して、リビングのドアから顔だけ出すと、おいでおいでと手招きする。








なんだ、あれ。
ちょっと可愛いすぎないか?






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