意地悪な君に
暖かいカップを両手で包み、そっと口を付ける。
「美味しい……」
「ホント!?」
冷えた体を芯から温めてくれたその紅茶は、僕の知っている紅茶とは違う香りがした。
「うん、美味しい…」
「それね、私の大好きな紅茶で、アールグレイって言うんだよ!」
アールグレイか。
紅茶にもそんな種類とか色々あるんだ。全然知らなかった。
でも、これホントに美味しい。
「美味しいよ。美晴ちゃん、紅茶淹れるの上手なんだね」
誉められて嬉しそうに頬をピンクに染めるその笑顔に、僕は目が離せなくなってしまった。
「・・・・・・」
なんだ、コレ。
ドキドキする……
心臓が、僕の意思とは無関係に暴れる。
この感情の名前を、まだ僕は知らなかった。
だけど、隣で見ていた俊くんには、全てお見通しだったらしい。
僕の耳には、その呟きは聞こえなかったけど…
「すごいモノ見ちゃった」
――――人が、恋に
落ちる瞬間――
これが、前の冬の、僕と美晴の出会いの話。
そして僕は春を迎え、6年生になった。