意地悪な君に
柳君の纏う優しい空気が、一瞬ではりつめた。
あれ・・・
何か、地雷?
初めて見る、怖い顔。
柳君、怒ってる・・・?
「言ったでしょ、美晴ちゃん…」
柳君がそっと私の髪に触れる。
いつもと違う怖い柳君の表情に、思わず肩がビクッと揺れた。
「男は、基本負けず嫌いだって」
髪に触れる指が、優しく頬に触れた。
机1コ分しかないふたりの距離は、思ったより近くて、さっきまでは気付かなかったその距離に息が出来なくなる。
ガタ、
と椅子が音をたてる。
その距離をさらに縮めようと、柳君が腰を上げた音――――
柳君が中腰になり、同時に距離がぐんと近付いた。
「や、柳君っ!!」
焦った私は思わず大声を出してしまった。
だって・・・
だってこれ以上近づいたら・・・
「柳君・・・?」
柳君は一瞬私の声にびっくりした顔をしたけど、すぐに俯いてしまった。
「ダメだよ・・・そんな妬かせるような事しちゃ。
ま、無意識だろうけど・・・」
そう言って、私の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
妬かせる・・・?
えーーーと。
あれだよね、一般的な意見って事だよね?
“私に”ってわけじゃないよね。
「・・・?」
首を傾げてみるけど、私の疑問には答えてくれない。
そんな私の様子をみて、ちょっと呆れたように溜め息を吐いた柳君は、元の通り椅子にかけると、まるで何も無かったかのようにいつもの顔に戻った。
・・・でも、
話題を変える気はないみたい。
「悠先輩って呼んで、仲良いんだね」