意地悪な君に



「えっ!仲良くないよー!」

「そうかなぁ、だって僕の事は“柳君”なのに、悠って名前呼びだし」

「それは、何かそうなっちゃったけど…でも仲良いわけじゃ……」


誤解されたくないからとかじゃなくて、本当に仲良くなんてないと思うんだけど。



「それに、よく一緒に帰ってるでしょ?」



見られてたなんてびっくりした。
確かに、一緒に帰る事もよくある。


いつもは吹奏楽部に入った千紗と待ち合わせして帰ってるけど、いつも一緒に帰れるわけじゃない。


千紗の練習が遅い日は諦めて一人で帰るんだけど、そんな日はいつも悠先輩が現れて送ってくれる。

それを柳君に説明する。



「それ……まさか偶然だと思ってるの?」

「うん」



だって、偶然じゃなかったら何?

待ち伏せ?



「偶然じゃなかったらストーカーじゃん!」

「なんか…妬いたりしたけど…会長可哀想になってきた」

「?」

「でもさ、ホラ、生徒会の手伝いだって、会長に呼ばれて毎日行ってるんでしょ?」

「あれは……だって脅されてるようなもんだし……」



実際、もう十分に借りは返したと思うし、行かなくてもいいのかとも思うけど。

ちょっと楽しくなってるのも事実で。



「やっぱ仲良いんじゃん」



え――――
何か納得行かない。。。



思った事が顔に出ていたのか、私の顔を見ると柳君は不思議な質問をしてきた。



「美晴ちゃんは、俺に“会長と仲良い”って思われたらイヤなの?」





・・・・・・・。



質問の意図がわからない。

わからないから素直に答えてみる。




「柳君にじゃなくても、誰からも誤解されるのヤダ」

「…あははっ!……そっか。素直だね、美晴ちゃん。」



柳君は笑っていたけど、心なしか寂しそうに見えた。







私、答え間違えたのかな……




少し気まずい空気になって、なんとなく二人とも黙ってしまう。



少しの沈黙の後、柳君は時計を見た。



「あっ…もうこんな時間かー今日も、行くんでしょ?生徒会室」






私達は気まずい空気のまま、作戦会議をお開きにして解散する事になった。

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