意地悪な君に
教室の前で柳君と別れ、私は真っ直ぐ生徒会室へ向かった。
別に早く行きたいわけじゃないし、どうせ今から行っても殆ど作業する時間は残ってないんだけどね。
でもいつものように、ちょっと不機嫌になりながら、きっと悠先輩は待ってるはず。
“待たせ過ぎだ”って怒られちゃうかなぁー
・・・なんて考えながら階段を駆け上がり、息を切らして廊下を走り、生徒会室のドアに手をかけた。
しかし・・・
『ガッ!』
あれ・・・?
いつもはすんなりひらくドアが開かない。
「ふんぬーーーっ!」
「えいっ!えい!!」
力いっぱいドアを引くけど、やっぱり開かない。
鍵、かかってる・・・
悠先輩、帰っちゃったのかなぁ・・・?
ケータイを見てみるけど、メールも着信もない。
どうしたんだろう?
今までこんな事無かったのに。
何か、あったのかな・・・?
今まで、私がこの部屋に来て入れなかった事は無かった。
悠先輩はサッカー部だから、今までも練習で生徒会室に来ない日はあったけど、でも、必ず私が入れるようにしてくれてた。
『鍵取りに来い』ってメールくれたり、木下先輩がいるようにしてくれてたり。
今思えば、初めて生徒会室に呼ばれた日、あの早朝だってそう。
あの日、私が着くよりもっともっと早く部屋に来て待ってくれていた。
私は、この部屋にくればいつでも悠先輩に迎えてもらえるのが、当たり前だと思っていた。
本当に、何かあったのかも・・・
もう一度ケータイを開き、悠先輩の番号を出す。
今まで、私から電話した事はない。
緊張しながら発信ボタンを押すと、呼び出し音が鳴った。
でも・・・
いくら鳴らしても、悠先輩が電話に出る事は無かった。