【Vt.短編】私のカレは可愛いのです。
バレンタインですから(side弓美)



就業間際、

取引先へ出向いていた緒方さんが帰ってきた。



「お疲れ様です。」


緒方さんはデキル男の代表みたいな人。

爽やかで優しいマスクに、すらっとした長身。

几帳面なタイプだが、人当たりは柔らかい。

28歳にして課長を務め、上司からも部下からも信頼は篤い。

当然のように女性の人気も高い。




すっと私の目の前に手が現れた。

その手を辿って仰げば、緒方さんが彼にしては少し不機嫌そうな顔で私を見下ろしていた。

私は無言で手に持っていた書類を渡した。


「……………。」

「……………。」



ちがうっ、とでも言いたげな顔で書類から顔を上げた緒方さん。

しかしその声は今しがたオフィスに入ってきた人物のハイテンションな声に遮られた。



「ただいまっすー!!」


営業の長田クンだ。

長田クンは帰ってくるなり私に話しかけてきた。

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