【Vt.短編】私のカレは可愛いのです。
弓美を見ても食えない笑顔には真意がまるで見えない。
これは、……言ってもいいんだろーか。
勢い言っとく!?
や、でも、…ここでドン引きされたらその後キマズイ。
返答に窮していると思わぬところから横槍が入った。
「あれー?弓美じゃん。」
そう声を掛けて男が慣れ慣れしく弓美に近づいてきた。
茶髪にだらしなく開けた開襟シャツ。
ジャラジャラとアクセを付けている。
見た目から言動の全てがチャライ。
随分と若そうだ。
「……カズヤ」
いつも、どんな相手にも笑顔を絶やさない彼女が、ほんの少し眉を顰めて。
その反応に俺の胸の中がモヤモヤと黒く染まった。
まさか、……元カレ、とか。
男は慣れ慣れしく弓美の肩に腕を掛け、俺を眺めにやにやと彼女を覗きこんだ。
「へーえ?これが彼氏?随分と大人な躾の良さそーな男選んだんじゃん?」
「緒方さんにシツレイよ。カズヤには関係ないでしょう。」
「んなツレナイ事言うなよ~。俺はいつだって弓美のコト心配してやってんのよ?」
男は茶化すように言って、ニヤリと笑った。
「でも躾が良すぎて弓美には物足りないんじゃね?―――色々と。」
挑発的な含み笑いに、ぷちっと何かが切れた。