笑顔~ほろにがココアは大人の味~
「かいちょー。」
みんなでワイワイ騒いでるなか、
そう言って顔を出すのは桐生先生。
「放課後なんだけどさー…」
毎日じゃないけど、わたしの置きメモが不完全だったときにここに来る。
でもここ最近は特に多い。
合唱コンクールのおかげで忙しくなりつつある。
クラスの合唱練習もあるし、
生徒会の仕事もある。
当日の役割も分担しなきゃいけないし、
先生方や実行委員とも話さなきゃいけない。
生徒会ってこんなに忙しかったんだって思うのと同時に、今まで何も打ち込むものがなかったわたしは、素直にそれが楽しかった。頑張らなきゃいけないって思った。
「…ってことでよろしく。俺今日ちょっと行けないかも」
「はい、ありがとうございました」
「お、たこさんウインナーもーらいっ」
「あ、ちょ…っ」
そういって桐生先生はわたしのお弁当からたこさんウインナーをつまみ、口に入れる。
さっきまで真剣だった桐生先生の顔が一気に笑顔になる。
「ごちそーさん」
「あはは先生かわいー」
みんなもつられて笑う。
一瞬で周りを笑顔ににすることができる、桐生先生は、そんな人。