【続】三十路で初恋、仕切り直します。

「じゃあ厨房から一式拝借してきますね。一応通常のシルバーの方も持ってくるので、比べてみてください」
「はい、お願いします」


退室する前に、西は振り返って力強く「泰菜さん」と呼びかけてくる。


「ここ、すっごくすっごく素敵なコーディネイトにして、当日、新郎さんをびっくりさせちゃいましょうね!泰菜さんから新郎さんへのサプライズですよ!」


我がことのようにはりきってくれる西の姿がほほえましかった。

披露宴の打ち合わせは多分すべて自分ひとりですることになると告げたときから、西は泰菜に寄り添って並々ならぬ熱意を傾けてくれていた。それがひとりで準備をする泰菜への慰めになっていた。


「……サプライズ、か」


指輪やプレゼントを不意にくれたりと法資から驚かされることはあっても、自分が驚かす立場になったことはまだなかった。

数ヵ月後にここで開く披露宴が法資の記憶にも残る素敵な披露宴にすることが出来たら。それは自分から法資への初めてのサプライズになるのではないか。そう思えば、ひとりで準備することが不思議とたのしく思えてきた。




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