【続】三十路で初恋、仕切り直します。
新幹線の中で何度も読み返しては涙を堪え、帰宅した後は法資が残していった衣類や歯ブラシを目にした途端耐えられなくなって、こんなに好きなのにどうして離れなきゃいけないんだろうと恨みがましく思いながら泣き崩れた。
前回も法資が帰国した後はさびしかったけれど、前よりももっと法資がいた名残が色濃い家でたったひとりで寝起きするのは本当につらかった。
法資と別れるたびに身を切られるようなさびしさが強くなるのだとしたら、たしかに『何度も味わうくらいなら、いっそしばらく会わないでいる方がマシ』なのだと痛感する日々だった。
そうやってこの一ヶ月は突然法資と離れ離れになってしまったことを引き摺っていたけれど、そんな感傷にゆっくり浸る間もないくらいやらなければならないことは山積みだった。
挙式や披露宴の準備、祖父の家を処分する手続き、それに入籍や出国の際にどんな手続きが必要になるか調べたり。忙しいことはある意味泰菜の救いになっていた。
それでもどうしても、休日出勤した後に車を走らせて『睡蓮』に向かい、ひとりぼっちで2時間かけて打ち合わせをして帰ってくるとさすがに心も体もへとへとになった。
「……ごはん、ちゃんと食べなきゃ」
そう思うのに、帰るなり居間の卓袱台に突っ伏したまま顔を上げることが出来なくなる。貧血気味でお腹も鈍く痛み、空腹よりも今はこのまま寝てしまいたいと思うくらいだるさの方が強かった。