【続】三十路で初恋、仕切り直します。

もともと泰菜は生理不順気味で、生理が数日遅れることはよくあることだった。けれど今回は予定日を大幅に過ぎても月のものが来ないままだった。

一度就職したての頃、心身ともに辛すぎてその影響か生理がひと月飛んでしまったことがあるからまた同じことが起きているのかもしれないと考えた。けれどその一方で避妊具が万能ではないことも承知していた。


もし授かったのならそれも『縁』があってのことだろうし、何より愛する人の子供なのだからうれしいし産むことにも迷いはないけれど、結婚式の準備が控えていてしかも夫になる法資が傍にいないときに『もしも』のことを考えるのはどうしても心細かった。


当然法資はそんな泰菜の様子に気付かないはずもなく、冴えない表情をしていた泰菜は法資に『何か心配なことがあるなら話せ』と説き伏せられ、黙っておくつもりだった生理の遅れを彼に打ち明けた。それが一週間ほど前のことだった。


「今朝、ちゃんときたの。……最近仕事も立て込んでたから、ちょっと疲れてたみたいで。それで遅れただけみたい……」

歯切れの悪く弁解するような言葉を並べた後に「ごめん」と呟くと、途端に法資はすこし苛立ったような顔になる。


『馬鹿。何謝ってるんだよ。……こっちこそ、不安なときに傍にいてやれなくてごめんな』



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