【続】三十路で初恋、仕切り直します。
入籍のことは、GWに会ったときもいつにするのかちゃんと話し合う時間が取れなかったので、もうすこし先延ばしになると思っていた。正直にそう告げると法資に真面目な顔で『まだ一緒には暮らせなくても、おまえのことにちゃんと責任を持ちたい』と言われる。
『披露宴の前に必ず一度は帰るから。そのときこの前書いた婚姻届け、ふたりで出しに行こう』
ちょろい女だな、と自分でも思う。それでも法資から口説かれるように言われると、離れているつらさもさびしさも宥められてしまいそうになる。
「……うん。そうしよう」
泰菜が首肯すると、法資はほっとしたように目を細めて、それからいたずらっぽく付け加えた。
『そのとき、おまえにご褒美やるな』
「それって披露宴の準備してるから……?」
『ああ。だいぶ無理させてるみたいだから。お礼にたっぷりサービスしてやるよ』
「……なんかイヤラシイ言い方」
軽く睨んでやると法資はますますたのしげに言う。
『アクセサリーだとかベタなご褒美と、ベッドでご奉仕的なエロいご褒美と、どっちがいいか考えておけよ?』
「そんなの……………どっちだっていい」
泰菜の返事が予期しないものだったのか、法資が笑いを収めて目を見張った。
『泰菜?』
気遣うような目を向けられた途端、なんの前触れもなくこの一ヶ月ずっと溜め込んでいた気持ちがあふれてきてしまった。
「……だって。この前みたいに、ちゃんとバイバイしないまま別れるくらいなら……法資にすけべなこと言われたりされたりするほうが全然いいよ……」