【続】三十路で初恋、仕切り直します。
14 --- あなたのとなりで願うこと (完)
(14)あなたのとなりで願うこと
「大丈夫、すっごくきれいだから」
「そうよ、泰菜ちゃん。リラックスリラックス」
両脇に立った義母と義姉が、熱の篭った口調で繰り返していた。
「お世辞じゃないのよ。泰菜さんのドレス、すごく似合っていて素敵よ」
「そうそう。あとはね、花嫁らしく幸せオーラ振りまいてにこにこ笑ってるだけでいいんだから」
今日はいよいよ都内で挙式と披露宴が執り行われる日。まずは午前中に親族のみを招いて挙げられる結婚式の準備に取り掛かっているところだった。
場所は駅に直結している大型の複合オフィスビルの、上階フロアにある専門式場のチャペルだ。
駅の改札から徒歩3分ほどで迷わず来られるこの式場は、赤ちゃん連れで参加する義理の兄夫婦のことを考えて選んだ場所だったけれど、成田空港から駆けつけることになった法資にとってもこのアクセスの良さはありがたいはずだ。
『悪い、当日朝イチで向かうから。絶対、遅れないようにするから』
仕事が押しているためぎりぎりのスケジュールで帰国すると法資が連絡してきたのは、挙式の二日前だった。
泰菜自身はもしかしたらこういうことになるかもしれないと半ば覚悟していたことなので、前日に落ち合えなかったことをすこしさびしく思いつつも納得していた。
けれど泰菜以上に気を揉んだのが、父の後妻の紀子と義姉である晶だった。