【続】三十路で初恋、仕切り直します。

「……法資って、いつからこんなスケベになったんだろ。子供のときのほうがまだ紳士的だったよね」
「は?俺がおまえに紳士的だったことなんてあったか?」
「ほらっ。中学生のとき、律儀に毎日帰り家まで送ってくれたことあったじゃない」





すごい形相で泰菜の在宅を確認してきてくれたあの日。

あれからしばらくの間、「おじさんに頼まれたんだよ」といかにも渋々引き受けたという顔をしながら、下校の際は法資が家まで送ってくれるようになった。

法資の部活の方が早く終わるときもあれば、泰菜の実行委員の方が早く終わるときもある。だから中学校の傍にあったバス停で待ち合わせて一緒に帰った。

小学生のときほど会話が弾むことはなく、ときどき言葉を交してもぶっきらぼうに返されることが多かった。クラスメイトやともだちの前だとよく泰菜をおちょくってくるくせにそれもなくて、ふたりきりになると急に無愛想になる法資に、男子ってよく分からないと当時は思ったものだった。





「……懐かしい話だな」

思い出話をする泰菜に、法資はむずがゆそうに顔を歪める。




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