【続】三十路で初恋、仕切り直します。

「何拒んでるんだよ」
「そりゃ拒みますよっ、もう何回-------」

「おまえ昨日はすごいこと口走ってたくせに。『おっきいけど痛くない』とか『これがすき』とかさ。どんだけエロいんだよ、おまえ」


からかうように言われて顔から火が噴き出そうなくらい猛烈な羞恥に襲われる。


たしかに久し振りに再会し抱いてもらった昨日、そんなようなことを言ってしまった気もする。だが自分から積極的に口にしたのではなく、ベッドの上でさんざん追い詰めてきた法資の意地の悪い誘導に引っ掛かって言わされた言葉だ。

断じて自分から喜々として言ったわけではない。


「……わたしそういうこと蒸し返されるの、やだって言ってるでしょ!もうやめてってばっ」
「本当にある意味感心するよ。おまえは俺煽ることにかけては天才だよな」


泰菜の言葉を無視した法資の手が、ひらひらしたスカートの裾から潜り込んでくる。再度「だめ」だと言っても、法資はやめてくれるどころか「なんか好きな女に抵抗されると燃えるな」とすけべなことを言い出す。

スカートに突っ込まれた手にあっという間に穿いていたものを剥ぎ取られると、そこからは昨日と同様のなし崩しだった。












「……どすけべ、どへんたい、」

満足げな顔で寝息を立てている法資の隣で罵っていた。

「けだもの、……ばか………ばかっ!」

とても起きそうにもない法資に向かってそう吐き捨てると、脱がされた服を丸めて、脱衣所まで向かう。




昨年の11月に法資と付き合い始め、それから約半年。

季節は春になり、ゴールデンウィーク目前の4月の最終土曜日だった。昨年の年末に土壇場で法資に仕事が入り帰国が叶わなくなったため、法資が泰菜の元へ会いにきてくれるのは成田で別れてからはこれが初めてになる。

年末に「行けなくなった」と告げられたときはあまりにもつらくて心が折れそうになったし、職場の田子からは「振られたのか?」と心配されるくらい、がっかりした気持ちがあからさまに顔にも出ていたようだった。

だから法資からゴールデンウィークの一足前に帰ってこられると聞いたときはうれしすぎて、プライドもなくテレビ電話越しに「早く会いたい」とばかり言っていた。


この半年間、法資のことが恋しくてたまらなかった。空港でその姿を見つけて「おかえりなさい」を言ったときはうれしすぎて胸がせつないくらいに痛くなった。


けれど。



「……いくらなんでも、こんなのないでしょうが!」





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