【続】三十路で初恋、仕切り直します。
「……今日課長と一緒になったのは偶々なの。もう一緒に飲みに行くことなんてないよ。本当に今日は偶然、田子班長たちと飲む店に課長も居合わせただけで」
「ああそうかよ。偶々、偶然、結構だけどな。おまえ、俺や田子さんが入店したとき、あの課長にスケベそうな目で見られてうれしそうににこにこ笑ってやがったよな」
長武とふたりきりで話をしていたとき。
鈴木たちに『見詰め合っていた』と茶化されたあの場面。お互いに「さよなら」と別れの言葉を口にしたことで、清々しさのあまりに微笑んでいたけれど。
傍目からでは、自分が長武に好意を寄せているような表情に見えたのかもしれない。
「自分を振った男に色目使われていい気分だったか?」
「ちが」
「今の職場、ちやほやしてもらえて、いろんな男を物色出来てたのしいんだろ?」
一瞬、法資の言っていることの意味がよく分からなかった。次に「おまえべつに俺がいなくても男に不自由することないんだな」と言われて、頭の中が真っ白になった。
-----------ひどい。
たしかに自分に非があったし。怒らせて当然かとも思うけれど。あんまりな言葉だ。悔しくて反論しようとした唇をまた塞がれてしまう。
------------ひどい、あんまりじゃない……!
また自分の言いたいことばかり言ってわたしの言い分は聞いてくれないの?と怒りとかなしさで体が震えた。目を閉じたりしないで、法資を睨みつけながら苛立ちしか伝わってこない刺々しいキスを受けていると。
突然太腿のあたりを指が食い込んでくるほどの強さで法資に掴まれて、そのまま片脚を持ち上げられた。
「……っ、ちょ、何して」
「だから。手を勝手に離すなよ」
一本足で立たされる姿勢が不安定でふらつきそうになるけれど、それよりも気がかりなのがスカートの裾だった。脚と一緒に持ち上がってしまい、めくれあがったスカートから下着がみえてしまいそうだった。けれどそんなことに気を取られているのも束の間、持ち上げられた脚と一本で立った脚との間に法資の膝が強引に割り込んできた。