【続】三十路で初恋、仕切り直します。
7 --- お赤飯とおじいちゃんの家
(7)お赤飯とおじいちゃんの家


「あー、飲みすぎたぁ」

帰りのタクシーの中で法資の肩に凭れながらぼやくと。

「あれだけばかすか飲んでりゃな」

飲んだわりにはさほども酔った様子のない法資は、呆れたように返してくる。


「……誰の所為だと思ってるのよ」


恨みがましい気持ちで隣にいるひとを睨み上げると、法資はしれっとした顔で「俺が何かしたか?」などと言ってくる。





先ほどまで居酒屋で開かれていた田子たちとの飲み会で。


すこし長くなってしまった外出から戻ると、席で出来上がっていた井野たちににやにや笑われながら『どこへシケこんでたんだ、おふたりさんよ』と問い詰められた。

『もう帰ってこないのかと思ってたぜ?』

井野の揶揄に、法資は意味ありげにちらりと泰菜に視線を送ると、にっこり笑って『ちょっと教育的指導の時間を頂いていました』と答えた。


『……なんだよ、それ』
『どういう意味だ?』
『よく分からねぇが、つまりはイチャイチャしてたってことじゃねぇの?』


怪訝な顔するおじさん三人衆に、法資は実にさわやかな笑みを浮かべたまま『まあ、そうとも言いますね』などと肯定してみせた。


さらに駄目押しのもう一言。


『相原が皆さんとあんまり仲が良さそうなところが妬けたもので』




----------そこから先は聞くに堪えなかった。




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