【続】三十路で初恋、仕切り直します。
「……法資でよかった」
言いながら腕に力を込めて法資の体を抱き締める。
離れている時間が長いとつい不安になって、法資の気持ちを信じきれなくなって、本当に自分は法資に相応しいのかとか飽きて捨てられてしまうのではないかと考えて、心は弱くなるばかりだった。
でもこうして顔を合わせて心も向き合わせていると、自分の気持ちがはっきり見えてくる。自分は本当に法資のことが好きで、彼の人生に寄り添いたいと心から願っている。
昼間に優衣にはさんざん弱気なことを言ってしまったけれど、自分の両手でしっかり目の前のひとを繋ぎとめておきたい。法資の心が自分から離れてしまわないように努力したいし、もっとふたりでいることが自然で心地よくなれるように、お互いに歩み寄っていきたいとも思う。
ゆっくりでもいいから人生という時間を掛けて、誰かと寄り添い合うしあわせを彼とこの身に馴染ませたい。
「わたし、法資のこと大事にするから。だからずっと傍にいてほしい」
「……頼まれなくてもな」
法資はなぜか苦笑しながら、「けどこれを聞いたら本当に俺でよかったって言えるかわからないぞ」と半ば脅すようなことを言ってきた。
「泰菜。今からとびっきり情けないことを言ってもいいか?」
抱き締め返されながら頷くと、頭上で苦笑するような気配を感じた。
「俺は泰菜に愛されたい」