【続】三十路で初恋、仕切り直します。


-----------愛されたい?


法資の言わんとすることが分からなくて、自分はちゃんと法資のことが好きだと伝えるも、「そういう台詞はベッドの中で聞きたいもんだな」などと茶化されてしまう。法資が今何か真面目な話をしようとしていた雰囲気を感じ取っていたからこそ、むっとしてしまう。


「もう、法資はすぐそうやってわたしのことからかう」


法資に抱きしめられたまま、彼を見上げて噛み付くと、法資はいかにも彼らしい意地の悪さで口の端を吊り上げた。


「仕方ないだろ。好きな女をいろんな意味で弄りまわせるのは恋人になった男の特権なんだから」
「……そうやって微妙にいやらしい言い方するし。実際なんか法資いやらしいし」
「何が悪いんだよ?惚れてるんだからスケベになって当然だろ。おまえだって好きなくせに」
「そっちこそ好きなくせに」
「だからそうだってこっちはハナから認めてんだろーが」
「何そのドヤ顔。バカみたいなんですけど?」


小学生みたいに言い合って、顔をつき合わせて。


喧嘩というよりじゃれあうようなくだらない応酬を終えると、法資は喉の奥でくつくつ笑いながら「やっぱおまえ、しっくりくるよ」と笑い出す。しばらくそうやって愉快そうな顔をしていたけれど、笑いが引くと法資はぽつりと零した。


「こんな調子で、もっとおまえといろんなこと話したいな。……それに俺はもっとおまえの話が聞きたい」


言葉で聞く以上に深い感情が込められているのを感じ、頭の中で今の法資の言葉を反芻する。




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