【続】三十路で初恋、仕切り直します。
心地いい穏やかな時間をすこしでも長く愉しむために、法資が殊更ゆっくり動く。
あまりにゆるやかで快楽を極めるためにはやさしすぎる。でもゆっくり動くからこそ、丁寧に丁寧に触れてもらえる。触れてない場所なんてもうどこにも残っていないというくらい、隅々まで唇を落とされ、キスされて吸われて舐められる。
泰菜の体に大事ではない場所なんてどこもないとばかりに、性感を得られるポイントからそうでない爪先や髪の毛までただひたすら大切に触れて愛してもらえる。
男らしい節くれだった指先でキスするようにやさしくやわらかに触れられていくと、そのたびに肌の下でまだ知らなかった快感の種が芽吹き出す。
このやりとりに心が満たされているから、ゆるやかに上り詰めていく過程を物足りないとは思わない。繋がった場所から体温といっしょにじわじわと伝わってくるやさしい快感はただひたすらに心地よく、やさしく体を揺さぶってくる法資のことが愛おしい。
「……ねえ、法資……」
愛おしいと思うからこそ、ひとつ気がかりなことがあった。
いつもは考える余裕もなく鳴かされてしまっていたから、今まで法資にしてもらってばかりだということに気付きもしなかった。でも法資にひたすら甘やかされて尽くされる贅沢に心が鈍く肥えてしまわないように。なにより彼がいつも自分にそうしてくれるように、自分も心だけじゃなく体でも法資を愛しみたいと思ったから。
「……今日はわたしにもさせて。……法資のしたいこと」
ごく自然にそんなことを願い出ていた。
「そういやおまえ、さっき『家に帰ったら何でもする』とかって言ってたな」
「……するよ、なんでも」
本気にしてない法資に、再度自分なりの勇気を振り絞って提案してみたのに、「無理だからいい」と笑いながら遠慮されてしまう。