【続】三十路で初恋、仕切り直します。
「おまえさ、付けないでやったことあるか?」
つまり避妊しないで、ということなら。
「………ないです、あるわけないでしょ、そんなのっ……!」
「期待通りの優等生な回答だな。けどホントにちょい入れもしたことないのか?」
「ありませんッ!!」
「じゃあおまえの『初めて』ってわけか」
自分の言葉に自分で浮かれてしまったのか、見てる方がはずかしくなるくらい法資がにやにやとうれしげに笑い出す。馬鹿じゃないのか。法資が、というより自分が。法資に差し出せる『初めて』がまだひとつでもあってよかっただなんてうっかり考えてしまった。
---------ほんとに馬鹿だよ、わたし。
恥ずかしすぎて自嘲したくなる。
「今ここで『何でもする』ってお言葉に甘えてやってみるってのもかなり魅惑的なお誘いだけど。やっぱ夫婦になったときのお愉しみは、夫婦になるまでとっておかないとな?」
にやにやと笑み崩れていく法資を馬鹿じゃないのと思い睨みながらも、何も隔てるものがなくこのひととひとつになれたらどうなってしまうんだろうと、覗かれることのない心の中では甘くてみだらなことを夢想していた。
「籍入れるのがホント楽しみだな?」
「……そんないやらしい意味で言わないでください!」
くだらないことを言い合いつつ、ゆっくりと足並みを揃えて、まずはゆっくりとふたりで一度めの絶頂を目指した。
一段一段時間を掛けて丁寧に高められた体が、最後の高みに到達したときの心地よさは、いままででいちばん深い多幸感と脳まで痺れるような深い達成感があり、結局この日は体を止めることが出来ないまま朝を向かえることになった。