【続】三十路で初恋、仕切り直します。
今日はGW初めの昭和の日と憲法記念日に挟まれた、カレンダー上では平日に当たる日だった。
今年は祝日の並びが悪くて世間的にはぶつ切れの連休になってしまっているけれど、製造業である泰菜の職場はGWの初日から続きの10日間が会社の休日として定められていた。
そのお陰で週末の日曜までまだ日本に滞在する法資と、上京して会場探しや諸々の準備を進めることが出来た。
ふたりが両手に提げた紙袋の中にはホテルやレストランで渡された挙式プランの見積もり書や、引き出物や演出アイテムなどのパンフレットがたくさん詰まっていた。持ち歩くには重かったけれど、休憩を取ったカフェでふたりであれこれ言い合いながら眺めるはそれはそれで浮かれそうになるくらい楽しくもあった。
結婚式にまつわることで決めなくてはならないことの多さに泰菜も法資も面食らってしまったけれど、悩むごとに具体的に脳裏に描かれていく結婚式の未来図に、準備の面倒さや煩雑さも悪くないと思った。それもきっと、ひとりで孤独に準備をしていたら味わうことのなかった満ち足りた気持ちだった。
「でもよかった。法資のお陰で思ってたより順調に会場決められて」
約半年もの間、結婚式のことを具体的に決められずにいたけれど、法資は一度話に乗りかかると実に仕事の早い男で、泰菜と希望する挙式の形式を話し合った後、条件に合う会場を結婚情報誌やウェブサイトの中から次々にピックアップし、その中からさらにいくつか泰菜に候補を絞らせると、あっという間に式場に問い合わせて下見の予約を取り付け、効率のよい見学のスケジュールも組んでしまった。
昨日は2ヶ所、今日は早朝から4ヶ所めぐってスケジュールを無事こなし終え、今はふたりの地元である桜井町に電車で向かっているところだった。