【続】三十路で初恋、仕切り直します。
事前に予想していたとおり両家の顔合わせは神妙な空気にはならず、挨拶もそこそこににぎやかな食事会になった。
はじめは法資や泰菜以上に固い表情で緊張しているようだった泰菜の父親の後妻・紀子も、英達たちと同い年だったことが分かると同年代同士の話題に花を咲かせ、くつろいだ顔を見せた。
なにより場の空気を和ませたのは、赤ん坊の英人の存在だ。
英人は生まれて半年ほどでまだハイハイは出来ないものの、きゃっきゃと笑いながら床をごろごろ転げまわって愛嬌を振りまき、ときおり「あぅ」や「うう」とご機嫌な声を上げて大人たちの耳目を集めていた。
「あら英人。おねえちゃんに抱っこされてよかったわね?」
泰菜が笑顔ですりよってきた英人を膝の上に座らせていると、それを見た母親の晶が笑いかけてきた。
「この子、あまり大人しく座ってることないのに。やっぱ若い子が好きなのかしら?」
「わたしと晶さん、そんな年違いませんよ」
「何言ってるの、女の5歳は大きいわよ?……ねえ泰菜ちゃんって赤ちゃん好き?」
唐突に話を振られて、なんとも答えかねてしまう。
正直分からなかった。
学生の頃も通り過ぎるベビーカーの中の赤ちゃんや電車の中で愛嬌ふりまいてる赤ちゃんを見ても、ともだちのように「かわいい」と声を上げてかまいにいったりはしなかった。
近所に自分より年下の子もあまりいなかったし、これまで偶に会う友達の子供をのぞき、赤ん坊と触れ合う機会がほとんどなかったから好きだとも嫌いだとも考えたことがなかった。
はじめは法資や泰菜以上に固い表情で緊張しているようだった泰菜の父親の後妻・紀子も、英達たちと同い年だったことが分かると同年代同士の話題に花を咲かせ、くつろいだ顔を見せた。
なにより場の空気を和ませたのは、赤ん坊の英人の存在だ。
英人は生まれて半年ほどでまだハイハイは出来ないものの、きゃっきゃと笑いながら床をごろごろ転げまわって愛嬌を振りまき、ときおり「あぅ」や「うう」とご機嫌な声を上げて大人たちの耳目を集めていた。
「あら英人。おねえちゃんに抱っこされてよかったわね?」
泰菜が笑顔ですりよってきた英人を膝の上に座らせていると、それを見た母親の晶が笑いかけてきた。
「この子、あまり大人しく座ってることないのに。やっぱ若い子が好きなのかしら?」
「わたしと晶さん、そんな年違いませんよ」
「何言ってるの、女の5歳は大きいわよ?……ねえ泰菜ちゃんって赤ちゃん好き?」
唐突に話を振られて、なんとも答えかねてしまう。
正直分からなかった。
学生の頃も通り過ぎるベビーカーの中の赤ちゃんや電車の中で愛嬌ふりまいてる赤ちゃんを見ても、ともだちのように「かわいい」と声を上げてかまいにいったりはしなかった。
近所に自分より年下の子もあまりいなかったし、これまで偶に会う友達の子供をのぞき、赤ん坊と触れ合う機会がほとんどなかったから好きだとも嫌いだとも考えたことがなかった。