【続】三十路で初恋、仕切り直します。
「本当?やってやって。替えてあげて!テープタイプだけど、やり方わかる?」
頷いて、晶のマザーバッグから拝借したおむつ替え用のマットを下に敷いて、ポーチから新しいおむつを取り出す。バルーンを持ったうさぎ柄のおむつの、その頼りないくらいのちいささに思わず笑みがこぼれる。
「あら手馴れているのね」
「いえ、興味半分で昔ともだちの赤ちゃんのお世話させてもらったことがあって。……最初は男の子って、どこまで拭いてあげたらいいのか分からなかったんですけどね」
ちょんちょんと英人の小股を拭いて、以前美玲におしえてもらったとおり指2本分おなかに余裕を持たせて、でもサイドが緩まないように調節しながらテープを貼り付けていく。
おむつを無事穿かせ終えるとロンパースのボタンを留めて、続いてモンキーパンツを穿かせようとすると英人が足をじたばたさせるのでなかなかうまくいかない。
「こらえっちゃん。ちゃんとズボン穿きましょ?」
英人は遊んでもらってるとでも思っているのか、寝転がったまま自分の爪先を自分のちいさな手で掴んで「あう」とご機嫌に声を上げる。
「あんよがさむいさむいになっちゃうよ?ほら、かわいいお星さまのズボン、穿こうね」
やさしく声掛けしながら英人にズボンを穿かせようとしていると、その光景を眺めていた晶が顔をにやけさせながら法資を肘で突いた。
「どうよ、どうよ、法くん。自分のお嫁さんが赤ちゃんの世話焼いてる姿。良くない?妄想出来るでしょ?明るい家族生活的な画が」
「……いちいちやめてくれよ」
晶に冷やかされて法資はうんざりしたように言う。けれどその顔は満更でもなさそうに笑んでいた。
----------自分の赤ちゃん見るときも、こんなやさしい目をしてるのかな。
そんな未来図を想像して、泰菜も俯きがちに英人を覗き込みながらこっそりと笑みをこぼした。