トライアングル
直の唇は、薄くて微かに震えていた…。


壊れ物を扱うように

優しい優しいキスだった。




直の唇に触れられて

頬が熱くなってくるのが、わかる。


でも、突然のことに

私は全く動けずにいた…。




ゆっくりと唇が離れて、


直の顔しか、私の視界にはなくて


切ない瞳に、吸い込まれそうになった。



「鈴……」


「ん……??」


「オレ、お前のことスキだ!


もう限界…。



鈴が、兄貴のことずっとスキなのは

痛い程わかってる…。



それでもスキだから」


「直……」


「兄貴は、ちゃんと鈴のことスキって…

付き合おうって、言ったわけ?」


「………」


「まだ言ってないのかよ。

何だよ、それ…」


「好きだよって言ってくるよ。

でも付き合ってるのか、よくわかんなく

て。


あんまり会えないし…。


でもいつも聞かない、私もいけないの」



直は、溜め息をつくと

言葉を続ける…。



「何で庇うんだよ。


オレを選べよ!

オレなら…鈴を絶対不安にさせない!」




直は強引に、キスをしてきた。





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