トライアングル
私は駅に向かう途中、直との分かれ道で

止まった。



「じゃあね、直。

しっかり勉強してね!」


「鈴、かあちゃん見たい」


「え?こんな息子ヤダ!」


「何で?」


「えー?やらしいから…?」



直は、ぷっと吹き出して笑った。


「おいで」



両手を広げて、待つ姿は卒業式を

思い出す…。


お互い思い出して、笑ってしまった。



私は、直の胸にギュッと抱き付いて

少し背伸びをして、直にキスをした。



「直、行ってきます!」



私は、笑顔で直の側から離れ

後ろを向いて、駅に向かって歩き出した。


「鈴!」


少し歩くと、直に呼ばれて振り向く。



直の目を見ると、何とも言えない

切ない瞳…。



私は、無意識に走り出していた。








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