トライアングル
私は気がつくと、直の胸の中に

舞い戻っていた。


「直…そんなに悲しそうな顔しないで。

行けないじゃん…」



直は、私を今までにない力で

抱き締めてくる。


息も出来ない程、心も胸も

締め付けられる…。



「鈴…オレ…ダメかも…」


「何が…?」


「お前から離れる、自信ない…」



直の声とは、思えない力ない声に

私も、直の顔を覗き込んだ。



直は、今にも涙を流しそうな

苦しそうな、表情だった…。



「直…」



私は、直の手を引いて、小道に入る。



「直…気が済むまで、付き合うよ?」


「だって、お前…入学式だろ?」



私は時間より、このまま直を

置いて行くことは、出来なかった。




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