名前を呼ぶまで
プロローグ
「すみれ!帰るぞ!」
授業がおわると隣のクラスの健太が私の教室にひょこっと顔をだす。
でも呼ばれるのはいっつもすみれ。
私の親友のすみれ。
高校に入るまでは幼なじみで家も近いわたしが健太と帰っていた。部活が終わると当たり前のようにさくら!って健太が呼びに来て、しゃべりながら帰っていた。でもそれは付き合ってるとかそんなんじゃなくて、ただ幼なじみだから、みたいなそんな感覚。
でも、今は違う。
健太がわざわざ家の遠いすみれを呼びに来るのは、二人が付き合っているから。
中学校からの親友のすみれと幼なじみの健太。その狭間に挟まれている私も、ほんとは健太のことが好きだった。
健太を好きになったのは中学校1年生の時。もちろんすみれにも言ったし、すもれも応援してくれた。でも、私は幼なじみだから、ってなんとなく理由をつけてそれ以来特に相談することもなくずっと健太を好きなままでいた。
毎日話せたし、とくに悩みもなかったし、すみれには相談することもなかったからそれ以来ほとんど健太の話はしなかった。でも、私はすみれがずっと応援してくれているって思ってた。
高校に入学してしばらくたった頃、すみれから相談を受けた私は何も言えなくなった。
「あのね、わたし、健太くんのこと好きなの!さくら、幼なじみでしょ?協力して欲しいんだ!おねがい!」
びっくりした。
すみれは私を応援してくれてたはずじゃないの?そんなことばっかりあたまをかけめぐる。すみれは続けた
「そういえば中1のとき、さくらも健太くんのこと好きだったよね?懐かしい!今やっとさくらの気持ちがわかったよ!」
ああ、、、って思った。
私がずっと健太の話をしなかったから、すみれはもう私が健太を好きじゃないと思ってるんだね?
ちがうよ。
わたしは
健太のことずっと好きなんだよ
でもにこにこと嬉しそうに微笑む
親友を見て、そんなこといえなかった。