【短編】非*恋愛な関係
悪夢
「待って・・・」

しぼるような自分の声で目が覚めた。

心臓はまだ波打っている。


起きあがってみると、ベッドの隣では、カズマが赤子のように膝を抱えて寝ていた。


ああ、そうだった。


夕べ遅くにカズマが来ていたのだ。


合い鍵を持っているカズマは、一人住まいの、チカの家に自由に出入りする。


夕べも、眠りの入口で、カズマが部屋に入ってくる、気配がした。


チカは起きるではなく、眠りに身をゆだねたままでいた。


やがて、隣に人の温もりを感じると、さらに、ゆるゆると、心が解かれてゆき、
そのまま深い眠りに引き込まれていったのだ。


覚醒しきれていない頭の奥で、夕べのことを少しずつ思い出してきた。


それなのに・・・・


思わず目覚めてしまうほど、怖い夢の内容は、もう微塵も思い出せない。


心の苦しさと不安だけは身体に染みついて離れない。



傍らの、カズマの丸まった身体を見やりながら、又何かあったのだろうな、とチカは思う。
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