ラベンダーと星空の約束+α
そして今日も学校を休むつもりだった。
目覚ましのアラームを止めてカーテンを開ける。
朝の新鮮な光りが部屋に差し込み、眩しさに目を細めた。
今日も快晴の観光日和。
忙しい一日の始まりだ。
着替えをしてリビングに下りて行くと、
目に入って来たのは、母さんが大地の額に冷却シートを貼っている姿。
大地は一番下の弟。
父さんに目元がそっくりの、目付きの鋭い1歳9ヶ月の幼児だ。
「大地どうしたの?熱?」
「そうなの。
紫龍は鼻水垂らしても滅多に熱は出さなかったのに、大地はすぐ熱出すよね。
やっぱり長男と末っ子の違いかなぁ」
「何それ?
長男だと丈夫で末っ子だと弱いの?何で?」
「違うよ。そうじゃなくて、一人目の子供って手を掛けちゃう物なんだよ。
手洗いうがいにバランスの良い食事。早寝早起きで規則正しい生活。
ちゃんと育てないとって意気込んで、紫龍が小さい頃は細かい事まで気をつけていたんだよ。
それが2人3人と子供が増えて、4人目となると適当になるよね。
雨上がりの泥水にダイブしちゃっても、あら楽しそうだねって笑って済ませちゃう。アハハッ」
「………」
つまり…母さんが言いたいのは、
長男の俺の時は、衛生面や食事睡眠に気をつけて風邪を引かせないように頑張っていたけど、
4人目の大地になると『子供は放っときゃ育つ』みたいな感じになると……
俺って大地より丁寧に育てられていたんだ。
知らなかった。
鼻水垂らして赤い顔している大地を見た。
母さんは冷却シートを貼り終えると、抱っこをねだる大地の頭を一撫でしただけで、忙しそうにキッチンに行ってしまった。
「大地…頑張れ……」
思わずそう呟いて、母さんの代わりに抱き上げる。
母さんはだし巻き卵を焼きながら俺に言う。
「紫龍、今日お店出なくていいから、家で大地みてくれる?」
「え……保育園は?」
「今38.1度。37度台なら預かってくれるけど、今日は駄目だね。
8時半になったら私が病院連れて行くから、その後お願いね」