ラベンダーと星空の約束+α
「2階に行くの?おもちゃないよ?」
「あっち!」
「分かった、分かった」
大地のおもちゃはリビングの片隅に集めて置いてある。
2階に行っても大して遊ぶ物はない。
寝室に、寝る前用の絵本が数冊あるくらいだ。
妹達の部屋に入れば色々あるだろうが、それで遊ばせる訳に行かない。
俺にはガラクタに見えるけど、妹達にとっては宝物。
大地に触らせたら、後で俺が文句を言われる。
俺の部屋にはおもちゃなんてないし…
取り合えず、大地と両親の寝室にでも連れて行くか。
と思ったが、大地はタタタッと走り、ドアの開いていた書斎に入ってしまった。
そこは1番おもちゃがないけど……
「大地、やっぱり下に行こう?
2階はお前には楽しくないよ?」
そう言っても大地は、部屋の真ん中に構える木のデスクの側面ににへばり付き、
「とって!
あれ!しゃーしゃん!」
と何かをねだる。
「しゃーしゃん?…ああ、もしかして『写真の父さん』と言いたいの?」
大地を抱っこして椅子に座り、写真立てを触らせてあげる。
「しゃーしゃんねっ!
〇×$&#¥*…ねっ!!」
今のは何を言っているのか分かんなかった。
今みたいに、語尾の「ね」しか分からない時は良くある。
分からなかったが「そうだね」と言ってあげると、大地は満足そうだった。
鼻水の付いた手で大地にベタベタガラス面を触られても、
フレームの中の父さんは、いつもと変わらない優しい顔で微笑んでいる。
いつもと同じ…だけど、その笑顔は年々日焼けして確実に色褪せて行く。
ここは直射日光が当たるから、後数年したらセピア色になりそうだ。
データはPCに入っているしプリントし直せばいいのだが、母さんはこの色褪せた感じがいいのだと言う。