ラベンダーと星空の約束+α
その内容は結構ドロドロしていた。
家庭教師先のお金持ちの家の夫人と不倫関係になったり、
ある伯爵令嬢を妊娠させてしまったり……
ジュリアンの出自は貧しい木こりの子。
しかし美貌と賢さで家柄ある女性達を虜にし、一歩一歩着実に出世して行く。
だが…人生そうそう上手くは行かない。
野望はついに打ち砕かれてしまう。
図らずも踏み台にしてしまった元愛人の告発により、一気に転落人生だ。
その後はまだ読んでいないけど、段々血生臭い展開になって来た。
確かに中学生の読物ではないかも知れない。
でも俺は大丈夫だ。
そう言った類いの本は他にも読んだし、変な影響を受けたりしない自信はある。
「大丈夫だよ父さん。
結構楽しく読んでいるよ」
「…や……今からそれを楽しく読まれると…
君の将来が心配になるんだけど……」
父さんは俺の手元から『赤と黒』を取り上げ、本棚に仕舞った。
その代わりに『Les Trois Mousquetaires』と言う本を持って来て、机に置いた。
「Les Trois Mousquetaires……三銃士?」
「そう。君の年齢にはこれが調度いい。
ねぇ紫龍、この書斎の本を読んでくれるのは嬉しいけど、少しペースが速いよ。
君の心と体の成長に合わせて、読む本も吟味しないと……
そうか、折角だから整理しておくか」
父さんが指先をパチンと鳴らす。
すると、本達が書棚から勝手に出て来て、移動を始めた。
今までは国別、時代別、著者別、ジャンル別、そんな風に並んでいた本が、一見無秩序に並び替えられた。
「これ何の順番?」
「君が読むのに相応しい順番だよ。
内容の適正さと文章の難易度を考慮した配置だから、ちゃんと順番守ってね」
「…… はい…」
「はい」と言ったが、そんな事しなくても大丈夫なのにと少し不満に思う。
けど折角俺の為に並べ替えてくれたから、順番通りに読んでみようか。
どうせ書斎の本を全部読んでしまうなら、同じ事だしな…
読み掛けの「赤と黒」は結末が気になるから、ダメと言われても先に読むけど。