ラベンダーと星空の約束+α
「…知ってるよ。紫に聞いた。
君に教えるべきか否か随分迷って、彼女は俺に相談して来た」
「何てアドバイスしたの?」
「事実を有りのまま伝えてごらんと彼女の心に語り掛けた。
紫龍は俺達の子供だから心配要らないと…そうだろ?」
「うん、その通りだよ父さん。
だって俺、話しを聞いても生まれて来て良かったって思うから。
あ…これ前にも父さんに言ったよね?でも、もう一度言わせて。
俺、幸せだよ。毎日楽しい。
俺に生を与えてくれてありがとう…父さん……」
「ん…何より嬉しい言葉だ。
俺からもありがとう。
生まれて来てくれてありがとう」
父さんの茶色の髪の毛も俺の茶色の髪の毛も、夕日に照らされ同じ黄金色に染まっていた。
夢の中だけど父さんにお礼を言えた。
それが嬉しくて、でも気恥ずかしさもあり、斜め下を向いて照れたように笑っていた。
父さんに会えて良かった…
夢だと分かっていても、温かく幸せな気分だ……
そんな幸せ気分に浸る俺。
しかし次の父さんの言葉で、ほっこりした気分は吹き飛んでしまう。
「紫龍…抱っこしてもいい?」
父さんは俺に向け両手を広げる。
俺は一歩後ずさった。
「え…やだよ!
もう中一だよ?そんな歳じゃない!
父さんも…あ〜ややこしいな…大樹の方の父さんも、たまにふざけて肩車してくるけど、アレってすげぇ恥ずかしいんだよ!」
「…… 大樹に肩車させて、俺には抱っこさせてくれないの?」
「させてる訳じゃないし、変なライバル心持たないでよ!
とにかく、こんなに大きくなって抱っこは絶対嫌だ!!」
父さんは生まれた俺を抱く事はできなかった。
だからそんな事を言い出すのだと理解はしていた。
けど、分かっていても嫌なもんは嫌だ。
乳児でも幼児でもないから恥ずかしい。
諦めてくれ。
断固拒否する俺に、父さんは笑いながらこう言った。
「君が小さければ、抱っこしても問題ないんだね?
楽しい会話を終了させるのは惜しいけど、もう時間もない事だし…いいか…」