ラベンダーと星空の約束+α
 


こうなったら実力で勝つしかないか…



「大地、しっかり掴まってろよ。本気で椅子に飛び込むからな」


「うん!オレつおいから大丈夫!」



留美と視線をバチバチぶつけ合う。



ジングルベルのメロディーに合わせ、一つの椅子の周りを歩き出した。



俺達は物凄く真剣なのに、母さんはニヤニヤしながらこの状況を完全に楽しんでいる。



中々音楽を停止させず、

時々リモコンを揺らしたり、フェイントまで掛けてくる。



何周させる気だよ…



まずは大地の集中力が切れた。

俺の腕の中でメロディーに合わせてジングルベルを歌い始める。



「じゃんぐる べぇ、じゃんぐる べぇ、すずが〜♪」



じゃんぐる?べぇ?

歌詞間違ってるぞ…と、ついうっかり心の中で突っ込んでしまい、俺まで集中を切らしてしまった。



ちょうどそのタイミングで音楽が止まる。



慌てて椅子に飛び込むと……


留美とタイミングがどんぴしゃりで、肩が激しくぶつかり合った。



座ろうとしていた椅子が弾かれて遠くに飛んだ。



そのまま俺達は固い床の上に転がるしかなかった。



大地だけは守らねばと、背中を床に打ち付けながら必死に小さな体を抱きしめる。



「イテ…大地…平気か?
大………あれ?」



腕の中の大地がやけに大きい。

急成長?そんな事あるはずないのに…



抱きしめる腕の中を見ると……

大地ではなく留美だった。



大地は!?

焦って周囲に視線を巡らせると、大地がトコトコと歩いていて、


弾かれて倒れた椅子をヨイショと起こし、ちょこんと座った。



「オレだけ一等賞!ヤッター!」



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