ラベンダーと星空の約束+α
夏休み明け早々の、二泊三日の修学旅行。
行き先は函館大沼方面。
「道内かよ〜」
と不満を漏らしていた奴らも、バスに乗り込めば、はしゃいでいる。
俺もこの日を楽しみにしていた。
自営業の我が家は、夏場の旅行は無理。
冬の旅行も、流氷を見に、一度網走に行っただけ。
スキー場も温泉も近場にあるから、レジャーはいつも日帰りばかりだ。
函館には行ったことがない。
友人と旅館に泊まるのも初めてで、ワクワクしていた。
ガイドブック片手に、バス時間を楽しむ。
隣に座るのは健太郎。
一番仲の良い友達だ。
バス席が健太郎の隣で良かったと思っていたのは、つかの間…
「健太郎、席取り替えてよ。ハイチュウあげるから」
そう言ったのは、クラス一、気の強い女子。
天国から地獄へ…
慌てて健太郎の腕をガシリと掴み、断ってくれと目で訴える。
俺と女子の間で、健太郎は困っていた。
すぐに「いいよ」と言わない健太郎を睨みつけ、
女子は無理やりハイチュウを手の中に押し込んだ。
やはり、女子の力には敵わない…
強制的に席替えさせられ、俺は地獄行き決定だ。
目的地大沼に着くまで、ひたすら寝たふりするしかなかった…―――