ラベンダーと星空の約束+α
「義兄さん、〇〇文庫の山下さんて女の人から電話」
「山下さん…?
今頃なんだろう…よくこの家の電話番号が分かったな…」
後で姉ちゃんから聞いた話しによると、山下さんと言う人は、
義兄さんが高校時代に書いた小説の担当をしてくれた、出版社の人らしい。
「はい……はい……はい?
え……本気ですか…?
それは若干の問題が……
−−−…いや、そう言う問題ではないのですが……
−−−…ハァ…そうですか、もうそんな段階まで話しが進んでいるのですか…
うーん、どうするかな……」
義兄さんは一瞬驚き、その後困り顔で、電話台を指でコツコツ叩く。
その様子を、ソファーでテレビを見ながら、横目で伺っていた。
「少し考える時間を下さい」と言って電話を切った後も、
義兄さんは食卓に座り、頬杖をつきながら何かを考え続けていた。
姉ちゃんが皿洗いを中断し、エプロンで手を拭きながら義兄さんの側に寄った。
「流星?困った顔してどうしたの?
今の電話誰から?何の話し?」
「いや…大した事じゃないよ。
紫が気にする程の内容では…」
「流星、もう秘密は無しって約束したでしょう?
何で言いたくないの?」
「言いたくない訳じゃないけどさ…
今ここにきて、アレが再浮上すると思わなくて…」
「もうっ!何言ってんのか分かんないよ!
男らしく白状しなさい!」
姉ちゃんに詰め寄られ、義兄さんは仕方なく電話の内容を説明していた。
「高校生の時、ライトノベル書いて数冊出版してるって言っただろ?
覚えてる?」
「うん、覚えてるよ。
恥ずかしいから絶対に読まないでって言ってた、女子中高生向けの恋愛小説だよね?
お金を稼ぐ為に書いてた本」
「そう。あの中の一冊に、映画化の話しが出ているらしい。
脚本は他の人が書くから、俺は関わらなくていいそうだけど、
原作者としての許可を求める電話だった」
「えー!?
流星スゴイね!やったね!
その映画見たい!絶対見る!」
「ハァ…やっぱ紫ならそう言うよね…
だから映画は困るんだけどさ…
けど、作成スタッフも決まって脚本も書き始めてるって言うから、
一応考える時間を貰ったけど、断れない雰囲気…」