ラベンダーと星空の約束+α
食卓に着くと、起きてきたお義父さんが、大あくびをしながら向かいの席に座る。
「お義父さん、お早うございます」
「おう。
流星、今日はお前、エプロンじゃなく作業着な。畑手伝え」
「はい。何するんですか?
追肥はこの前したばかりですよね?」
「土の入れ替えだ」
土の入れ替えと聞いてもピンとこない。
そんな作業を、昨年も一昨年もやっている所は見ていない。
不思議に思う俺に、味噌汁を啜りながらお義父さんが説明を足す。
「南側のラベンダーの生育が今ひとつだと思ってたらよ…
大樹の野郎のしわざだった。
うちに近い畑に、油カス撒くなって教えてあったのに、あいつ馬鹿だから忘れやがった。
一人前の台詞吐いても、まだまだだな。
そのせいで、あいつの畑から流れた窒素肥料が、うちのラベンダーに悪さしやがる。
枯れねぇ内に、土入れ替えんぞ」
どれくらいの面積の土を入れ替えるのか、
まだ分からないが、大変そうだ…
お義父さんはムスッとして不機嫌だ。
大樹…
きっと今晩うちに呼び出され、説教喰らう羽目になるんだろうな…
―――――…
P.M. 1:00
朝食後、お義父さんと二人ですぐにラベンダー畑に入ったが、
昼を過ぎても、土の入れ替え作業は、予定の三分の一しか終わっていない。
今日中に終わらせると言っていたが、果たして終わるだろうか…
晴天の空の下、紫が持ってきてくれたお握りを畑で食べ終え、
作業の続きをと思った所で、胸ポケットでスマホが鳴り出した。
土に汚れた軍手を脱ぎ、スマホを取り出し耳に当てると、店舗からのお義母さんの呼び出しだった。
お義父さんに断りを入れ、畑を離れ裏口から店に入る。
すると昼の慌ただしい調理場で、お義母さんにオムカレーと、サラダと富良野牛乳の乗ったトレーを手渡された。
「食べていいとか…?」
「そんなんで呼び出す訳ないでしょ?
それ、オーダーミスで余っちゃったんだよ」
「俺に“アレ”をやれと…」