ラベンダーと星空の約束+α
俺のせいではないと言いたくて、お義母さんに視線を移すと…
「まぁまぁ、いいじゃないの。
損失が出ないのはいい事だよ。
流星、その千円そこの箱に入れといてね」
「お母さん!!流星に変な事させないでよ!
流星にやらせるくらいなら、私が男性客にお願いして買って貰うから!」
「そう?じゃあ、次オーダーミスで何か余ったら、紫にやらせるか。
おじさん連中にお尻一撫でさせて、買って貰うのもいいね」
「待った。
駄目、絶対に駄目だ。
紫は色仕掛け禁止だから。
お義母さん、いつでも俺を使って下さい」
「流星っ!!」
やきもち焼いてくれる可愛い妻に軽くキスをし、急いでラベンダー畑へ戻った。
土に塗(マミ)れて働く俺の肌を、真夏の強い陽射しがジリジリと焦がしていく。
お義父さんや大樹程ではないが、この地に住んでいると、俺の肌色も健康的な褐色になってきた。
土を弄り、ラベンダーを育て、日の光りを全身に浴びると、大地と共に生きているのだと強く実感できる。
この大地は、気持ちが良いな…
不意に、観光客に声をかけられる。
「あのー、切り花体験は、どこにお願いすれば…」
タオルで汗を拭い、立ち上がった。
「いらっしゃいませ。
切り花体験は、こちらでも受け付けていますよ。
一回350円になります」
初老の女性のお客さん達を連れ、調度摘み取るに相応しい、満開のラベンダーの方へ移動する。
「見事なラベンダー畑ですねぇ。
紫色って、濃かったり薄かったり、鮮やかだったり…一色じゃないんですね。
私達、富良野は初めてなんです。
だけど、もうすっかり魅了されてしまいました」
「ありがとうございます。
丹精込めて育てていますから。
今年も綺麗に咲いてくれました。
紫色の海原…自慢の大地なんです」
この美しい大地に住み、もうすぐ4年。
『自慢の大地』と言う台詞が、自然と口をついて出るのは、心も体もこの地に根付いた証拠。
それが何とも嬉しくて、自然と頬が緩み、口元が綻んでいた。