ラベンダーと星空の約束+α
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P.M. 7:30
閉店後、ラベンダー畑のライトアップの準備を、今日はお義父さんに任された。
花を傷めないよう気をつけながら、畑の中に配線を巡らせる。
薄闇の中、照明のスイッチを入れると、ラベンダーが青く光りを放ち、
待ち兼ねていた観光客が、歓声を上げる。
まだ空には明るさが残っているが、後30分もすれば辺りは完全に闇に包まれ、
満天の星空の下、より一層ラベンダーが輝いて見えるだろう。
作業を終えて自宅に戻ると、カレーライスのスパイシーな香りが迎えてくれた。
土に汚れた作業着から、清潔な部屋着に着替えをし、洗面所で手と顔を洗い、リビングに入った。
今日の夕食を作ってくれたのは、紫。
店の片付けと掃除は、お義母さんと青空君がやっていた。
家に入ったのが一番遅かったのは俺で、皆食卓に座って俺を待ってくれて…はいなかった。
今夜の食卓…いや、リビングの雰囲気は、いつもと違いピリピリしている。
食卓テーブルで食べ始めている、お義母さんと青空君。
紫だけは俺を待っていて、席につくと、大盛りカレーライスとサラダを出してくれた。
彼女が俺に耳打ちする。
「今日のお父さんのお説教、長そうだよ…」
説教は、俺がされる訳でも紫がされる訳でもない。
その矛先は大樹。
お義父さんと大樹は、食卓ではなくソファーに座っていた。
ソファー前のローテーブルに、ビールとイカ焼き、冷奴など、酒のつまみが乗せられているが、
大樹のグラスのビールは泡だけ消え、内容量は減っている様子がなかった。
リビングに、お義父さんの声が響く。
「お前は勝手に肥料の配合変えやがって。
うちに近い畑に、油かす撒くなって言ってんだろ?
馬鹿野郎が…」
「ゴツンッ」と、げんこつされてる音が聞こえた。
「痛ぇ…」
「痛ぇのはこっちだ。
うちのラベンダー枯らす気か?
いいか大樹、小っせぇ事でも何か新しい事をやる時は、まずお前の親父に相談しろ。
勝手にやるな。
お前はまだまだ半人前だって自覚が足りねぇんだよ。ったく…」