ラベンダーと星空の約束+α
怒られている大樹の背中は、いつもより小さく見える。
その姿を見ながら、変に言葉数の少ない食卓で、皆は黙々とカレーライスを口に運んでいた。
店で出しているカレーより、自宅用に作るカレーは辛口だ。
辛口でも甘口でも、紫が作るカレーは美味しい。
いつもの様に、俺の皿だけ、目玉焼きと太いウインナーがトッピングされているのも嬉しい。
全てを平らげ満腹になった時、紫にノンアルコールの缶ビールを一本手渡された。
「流星お願い、大樹を助けてやって?
いつもなら、げんこつ落としてすぐに怒りも収まるけど…
お父さんかなり酔っぱらってきたし、さっきから同じ内容で怒ってるし…
このままだと、深夜までお説教が続きそう」
食卓から説教中のお義父さんを見る。
枝豆を食べ、新しいビールの缶を開けながら
「馬鹿野郎が、お前は半人前だって言う自覚を…」
同じ台詞を繰り返していた。
今の俺は、お義父さんと身構えずに会話出来る様になったとは言え、
この状況で、あの中に入るのは勇気がいる。
それに大樹なら、俺に助けられるより、夜が明けるまで怒られた方がいいと言うんじゃないかな…
そんな気がして、躊躇していたが、
「流星お願い…」
可愛い妻に言われては、断れない。
食卓の席を立ち、ノンアルコールの缶ビール片手に、ソファーに移動する。
「俺も話しに混ぜて貰っていいですか?」
お義父さんに断りを入れてから、大樹の隣に腰を下ろすと、
「別にお前の助けなんて求めてねぇよ」
と言わんばかりの視線を返された。
そうだろうと思っていたよ。
俺に助けられるなんて、大樹のプライドが傷つくのだろう。
それで、
「やっぱ先に風呂に入ってからに…」
そう言い掛け、立ち上がろうとした。
すると、ゴツイ馬鹿力の腕が伸びて来て、俺を再びソファーに戻す。
何だよ…本当は助けて欲しかったのか?
素直じゃない奴だな…
紫が大樹を弟の様に思うなら、俺にとっても弟…
しょうがない。
今日は助けてやるか。
――――……
P.M. 11:00
大樹を庇いつつ、お義父さんを宥めて、お説教の時間は1時間弱で終了した。