ラベンダーと星空の約束+α
 


怒られている大樹の背中は、いつもより小さく見える。



その姿を見ながら、変に言葉数の少ない食卓で、皆は黙々とカレーライスを口に運んでいた。



店で出しているカレーより、自宅用に作るカレーは辛口だ。



辛口でも甘口でも、紫が作るカレーは美味しい。



いつもの様に、俺の皿だけ、目玉焼きと太いウインナーがトッピングされているのも嬉しい。




全てを平らげ満腹になった時、紫にノンアルコールの缶ビールを一本手渡された。




「流星お願い、大樹を助けてやって?

いつもなら、げんこつ落としてすぐに怒りも収まるけど…

お父さんかなり酔っぱらってきたし、さっきから同じ内容で怒ってるし…

このままだと、深夜までお説教が続きそう」





食卓から説教中のお義父さんを見る。


枝豆を食べ、新しいビールの缶を開けながら

「馬鹿野郎が、お前は半人前だって言う自覚を…」

同じ台詞を繰り返していた。




今の俺は、お義父さんと身構えずに会話出来る様になったとは言え、

この状況で、あの中に入るのは勇気がいる。




それに大樹なら、俺に助けられるより、夜が明けるまで怒られた方がいいと言うんじゃないかな…




そんな気がして、躊躇していたが、

「流星お願い…」

可愛い妻に言われては、断れない。




食卓の席を立ち、ノンアルコールの缶ビール片手に、ソファーに移動する。




「俺も話しに混ぜて貰っていいですか?」



お義父さんに断りを入れてから、大樹の隣に腰を下ろすと、

「別にお前の助けなんて求めてねぇよ」

と言わんばかりの視線を返された。




そうだろうと思っていたよ。

俺に助けられるなんて、大樹のプライドが傷つくのだろう。



それで、

「やっぱ先に風呂に入ってからに…」

そう言い掛け、立ち上がろうとした。




すると、ゴツイ馬鹿力の腕が伸びて来て、俺を再びソファーに戻す。



何だよ…本当は助けて欲しかったのか?

素直じゃない奴だな…




紫が大樹を弟の様に思うなら、俺にとっても弟…

しょうがない。

今日は助けてやるか。





――――……


P.M. 11:00


大樹を庇いつつ、お義父さんを宥めて、お説教の時間は1時間弱で終了した。



< 30 / 161 >

この作品をシェア

pagetop