ラベンダーと星空の約束+α
 


留美のことは、少しは可愛いと思ってたけど…

あんまり冷やかされるから、嫌になってきた。



そう言う感情を、大人達は何で分かんないかな…



留美の話しはしたくない。
だから母さんを急かしてみた。




「そんな事より、俺、腹減ってんだけど。
焼きそばまだかよ?」




「“お腹空いた。早く作って下さい”でしょ?

紫龍は言葉が悪い。

誰に似たんだか…大樹だね。

あんたは将来接客業なんだから、ちゃんとした言葉遣いをしなさい」




「…チッ…」




「舌打ちしない。返事は?」




「おう…」




「“おう”じゃない!」




「…はい」





母さんはいつも口煩い。

反論したい時も一杯あるけど、口答えすると余計に煩いから、黙って頷いときゃいいんだって、父さんに教わった。



母さんはフライパンの中の焼きそばを賄い用の皿に入れ、揚げ立てのポテトフライとフランクフルトを付けて、俺に手渡した。




オヤツはいつもこんな感じ。

焼きそばかサンドイッチかカレーライスに、大抵ポテトフライ付き。



オヤツにこの量は多過ぎだろって良く言われるけど、死んだ父さんに似て、大食でも太ったりしない体質なんだ。



写真でしか知らない実の父に、特別な想いは持てないけど、

何でも食べたいだけ食べられる体質に生まれてきた事には感謝だよな。




調理場の奥の従業員休憩室で、焼きそばとポテトフライを急いで平らげると、フランクフルトは食べずに片手に持ち、店を出た。



そのまま家には入らず、自転車を飛ばして畑に向かう。

畑って言うのは、ラベンダー畑じゃなく野菜畑の方。



これもいつもの日課で、放課後は父さんの畑で過ごしている。




家がポツポツと点在しているこの辺りでは、放課後に学校の友達と遊ぶのは距離的に不可能だった。



だから放課後や休日は父さんにくっついて畑を手伝ったり、

俺の中では新種の珍しい虫を探したり、

雨上がりには、葉っぱの上に溜まった宝石みたいな水玉を眺めたり…

そんな風にして過ごしている。




トラクターに乗せて貰えるのも楽しみの一つ。

つまり父さんにくっついてると、何かかにか楽しい事に出会えるんだ。



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