ラベンダーと星空の約束+α
「父さん…俺将来、父さんみたいに農業やりたいな…ダメかな?」
「…それは…紫と相談だな…」
母さんは、俺にファーム月岡を継がせたがっている。
小さい頃から当たり前のように言われ続け
“将来の夢”がテーマだった学校の作文でも、店を継ぐと書いたけど…
最近は農業がやりたいと思い始めているんだ。
ファーム月岡が嫌な訳じゃない。
母さんと軽食コーナーの新メニューを一緒に考えた時は楽しかったし、ラベンダーも好きだ。
どうしよう…
畑がやりたくなったと言ったら、母さんはどう思うかな…
がっかりさせてしまうかな…
それは嫌だな……
母さんの悲しい顔は見たくない。
心の天秤(テンビン)が、店と野菜畑を乗せて揺れていた。
まるで自分みたいな、小さなジャガイモの青い実。
それをつつきながら将来について考えていると、
後ろから頑強な腕がニュッと伸びてきて、体がフワリと宙に浮いた。
急に高くなる目線。
「あっ!」と思った次の瞬間には、俺の体は父さんの肩の上にあった。
「下ろしてよ!もう子供じゃないし、肩車なんて恥ずかしいから!」
「あ゙?お前はまだ十分ガキだろ。
肩車の似合うチビ助だ。
10歳児のガキが、一丁前に将来について悩んでんじゃねぇ。
畑にしろ店にしろ、それ以外にしろ、今から決めようとすんな。
アレもコレもやりたいって言えるのは、ガキの特権だぞ?
一つに絞るのはまだ早ぇ」
「一つに絞らなくてもいいの?」
「おう」
「父さん!俺、ファーム月岡と野菜畑と両方やりたい!」
「おう。それでいい。
んじゃ解決した所で、もうお迎えの時間だ。
残り二人のチビ共回収しに、保育園に行くぞ」
「うん!」