ラベンダーと星空の約束+α
普通はさ、結婚式前夜の花嫁なんて、ウキウキそわそわドキドキするものじゃないの?
全く紫ちゃんは…いや、月岡家のみんなは!
明日が結婚式だと言う雰囲気のカケラもないこの家族に、僕は呆れ気味。
しかもそれは、結婚式前夜だけの話しじゃなく…
この商人一家はなんと、当日の明日も店の営業を続けると言うから、驚いたよ。
書き入れ時に店を閉めるのは勿体ないとか言ってさー、
式場も教会じゃなく、ファーム月岡のラベンダー畑の前でするって言うから、鼻の穴開いちゃうよね。
明日の紫ちゃんはきっと、ウエディングドレス着ながら働く気だよ。
そんな訳で、一般の花嫁達が夢の実現に一生懸命になるのとはかなり違った、結婚式前夜の紫ちゃん。
店の倉庫の残数表を見て、明日発注を掛ける品をピックアップしながら、不満げな僕に言う。
「瑞希君、髪型もメイクも私に聞くより、流星の希望を聞いてあげて?
私の希望を強いて言うなら、流星が見たい私に仕上げて欲しい」
「ふーん、大ちゃん好みね…
それなら聞かなくても分かるよ」
デザイン画の中の一つを赤ペンで丸く囲み、『大ちゃん好みに』と書いて相談は終了。
大ちゃんの好みなんか聞かなくても、僕には手に取る様に分かる。
華美でゴージャスなのは嫌がるから、シンプルで清楚で、若い花嫁らしく可愛らしい感じをプラスすればOK。
大ちゃんが好きな綺麗な黒髪は、全て結い上げた完全アップスタイルより、一部下ろした方がいい。
風になびいてる感じに、毛先に緩くウェーブを付けるかな。
耳の後ろに、何か飾りを…
大ちゃん好みで言うと、ティアラや宝石類はNGだね。
キラキラしたヘアアクセを一杯持って来たけど、使わないで生花にするか。
何の花…なんて考える事なく、ラベンダーで決まり。
明日、ラベンダーを少し摘み取って髪に挿すかな。
メイクは余り色を乗せず、付け睫毛も要らない。
元々目が大きいし睫毛も長いから、むしろ目を描き過ぎないように気をつけないと。